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ワッペン


地元で、千葉市幼稚園教育振興大会にお招きいただいた。そこでとても感動したお話
を聞くことができたので、ここでご紹介したい。幼児教育とは何か、を考えさせられた。

その男の方(今日の来賓の一人)は、若い頃幼稚園の先生になった。ある日、幼稚園
の運動会があり、あまり足の速そうではない小柄な男の子が目に留まった。「一等賞
はあの子には無理だろうな」そんな勝手なことを思いながら見ていると、何とその子が
駆けっこで一等になった。先生はビックリ感激して、その子に駆け寄り、胸に一等賞の
ワッペンをペタッと張り、抱きしめてあげた。先生はその後、すっかりその事を忘れて
いたのだそうですが、実は、こんな後日談があったとのことです。

その子は、家庭の事情で京都に引っ越していった。聞けば京都で大学まで卒業し、
そ の後、幼稚園の先生になった。ある日、その懐かしい子から手紙が届いた。読めば、
その先生が今もやっている幼稚園で働きたいという。京都でもいくらでも仕事はある
のに、と不思議に思った先生は、その教え子に手紙を返した。すると、その子は、昔
むかしのワッペンの思い出が忘れられず、是非、生きる力をくれたその先生の下で教
えてみたいのだといった。このケースは教育する側の何気ない言葉や行動が子供のそ
の後を大きく左右するものだという好例ではないだろうか?教育者の言動は受け取る
側の子供の感性に自分の想像よりもずっと大きな跡を残すのである。だからこそ教育
者は、日々自分の感性を素直にかつポジティブに子供に投影し、しかもその影響を
後々まで慎重に見守り続けていかなければならないのだろう。私の大事にする一期一
会という考え方は教育の場面における教育者と子供の間でもやはり重要なことだと
感じたエピソードだった。

何気ないワッペン一つが、その子に大きな影響を与えた。その先生は、今でもその話
をするたびに目頭を熱くする。

 
   
2004年5月26日
田嶋 要
 
 


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