最近の流行りコトバにもなってしまった感のある「オレオレ詐欺」について、現場でご苦労されている警察の方のお話を地元で聴く機会があった。参加した方には高齢の方が多かったが、皆真剣そのもの。現場の話には確かに迫力がある。実際に怪しい電話を受けたという人も結構いた。オレオレ詐欺といっても、今どき「オレオレ」と言って電話してくるケースは皆無で、弁護士とか医者とか警察を名乗って掛けてくる場合がほとんどだという。そしてその被害の大きさは驚くほどに多い。2004年の1月から7月までの間に、全国での被害総額は何と77億円。件数は4647件。つまり、1人平均で150万円もの被害なのである。社会保険庁や三菱自動車や、あるいは各地の温泉街と、今年の夏は世間の信用を失う事件が相次いだが、まあそういった不誠実・不正直な世の中を象徴するかのように、遠く離れて住む一人暮らしの子を思う親の弱みに付け込んだ卑劣な犯罪も激増しているということか。高齢者が被害者の大半だと思っていたら、実際にはこんな子を持つ親の世代なのだという。
警察の講師の方の話で興味深かったコメントは、「これまでの日本は、交通事故防止ということに大きな努力を注いできたが、水と安全はタダという意識の中で、防犯は対策が遅れてしまっている」という部分だ。確かに統計データを見る限り、これはかなり当たっているといえる。交通事故に関しては、モータリゼーションの発展とともに学校教育の現場でも盛んに交通安全が言われ、その甲斐もあって10年前に年間1万人を超えていた交通事故死者数もその後毎年減りつづけ、昨年度はついに7702人となった。こういう数値改善は近年かなり珍しい。これに対して犯罪件数の激増は目を覆うばかりだ。オレオレ詐欺を含む知能犯を始め全ての犯罪が激増し、10年前から100万件以上増えた平成14年度の件数(刑法犯認知件数)は何と285万件にも上る。さらに憂うべきは犯罪検挙件数の激減である。そして両者相まって、犯罪検挙率はこの10年で半分の20%まで落ちた。つまり、今やざっくり言って5人の犯罪人のうち4人までが、捕まることなく私たちと同じ世界で何食わぬ顔をして暮らしているというわけだ。
交通事故や災害は、現代社会の中である程度の発生は不可避だと言わざるをえない。それに対して犯罪と言うのはそこに犯意がある。だから様々な工夫で犯意を少しでも起こさせない社会作りが不可欠だ。それによって交通事故や災害以上に犯罪件数を激減させることが可能なはずだ。戸締りや鍵かけをせずに隣近所に出かけたり床に着いたりする時代はとうの昔に終わったと肝に銘じて、これからの日本も遅ればせながら防犯対策に全力をあげねばならない。先日の新聞にも、70歳だかのお年よりがオレオレ詐欺の防犯セミナーに出席し、その後(未遂)犯行者に「私の苗字を言ってみよ」といって被害を未然に防いだという、まことに嬉しい記事が載っていた。まさに地域を挙げての教育も、地道だが着実な防犯対策なのである。 |