辛(つら)さを抱(いだ)く。なかなか含蓄ある言葉で、私は好きである。今は余り言わなくなくなったし、こんな言葉をもっと若い世代は好きではないであろう。しかし少し前の日本でも、これが当たり前の時代であった。日経新聞の「私の履歴書」で始まった、衆議院議長河野洋平氏の人生も例外ではなかったろう。本会議場のあの代表質問の場所を見下ろす唯一の人として、議長席に座る河野さんしか私は知らないが、なんとなく折り目正しく、尊敬できそうな、それでいて少年の様な純粋さも感じられるお方だ。今の連載の書き出しでも、そのような人格が育まれた当時の社会の一端が覗える。
考えてみると、私は結構多くの著名人の歩んできた人生を、この「私の履歴書」から知り、その都度いろいろ自分の人生の指針を少なからず得ているような気がする。マハティール、周恩来、京セラの稲盛会長、セコムの飯田会長、などなど、なるほどと感じ入ったくだりが色々とある。そして、共通することは、彼らの人生は決して平坦ではなく、むしろこの「辛抱」の連続であったという、至極あたりまえの事実なのである。辛(つら)い、という漢字は辛(から)い、とも読む。人生は甘くない。人生は辛(から)いのだ。
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