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突然、アメリカの長距離通信最大手のAT&Tが消滅した。地域電話会社のSBCに買収されたのだ。と思ったら、今度は同じく長距離通信第二位のMCIもベライゾンに飲み込まれた。AT&Tはその昔マ・ベルの愛称で慕われた巨大民間企業、そしてMCIは彗星の如く現れたベンチャー企業と出自は全く異なるが、どちらも規制緩和の流れの中で一時は大きな将来性を期待された会社だ。その両方ともが消滅した。どちらもカスタマーへのラストワンマイルを持たない長距離通信の専業会社だった。会社の寿命は50年などと言うが、時の流れと栄枯盛衰を実感する。
通信という産業の宿命なのであろうが、どちらの会社も国の規制に翻弄されたという面は否定できない。特に1996年以降の米国通信法改正によって地域電話会社が長距離通信会社に提供するラストワンマイルのコストが跳ね上がり、それによってビジネスモデルの収益性が急速に悪化していった。様々な経営努力、創意工夫のサービス開発や営業努力も、規制環境の一変の前にはひとたまりも無いところが、この通信産業の悲哀でもある。
もっとも、米国政府の観点からすれば、自国産業の発展こそが重要なのであって、その中のプレーヤーたる個別企業の浮沈には余り関心がないということも言えるのかもしれない。だが、分割したり合併したりという繰り返しによる企業体力の疲弊、サービスの混乱などによって、一体どれだけの見えない社会コストが発生しているのかという点も忘れてはならないと思うのだ。そんなことを考えると、何かにつけ「周回遅れ」と批判されることの多いわが国であるが、他山の石として米国から学ぶという意味においては、制度改革の「周回遅れ」は悪いことばかりとは言えないのかもしれない。
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