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前哨戦

 

 ライブドアのおかげで、聞きなれない企業買収に関するカタカナ専門用語が突如メディアを飛び交うようになったが、実はこうした動きはまだまだ前哨戦であることを皆さんはご存知だろうか?というのも、来年に予定されている商法改正では今まで国内企業同士でしか認められていなかった株式交換による企業買収が、外国企業と国内企業との間でも可能になるのである。分かりにくいかもしれないが、要は相手の企業を買収するために、現金ではなく自分の会社の株を現金代わりとして差し出すのである。そしてこの場合、株式の交換比率は互いの株式時価総額によって決まるため、時価総額が高ければ高いほど有利に企業買収を進めることができる。

 そこで問題になっているのが、欧米のトップ企業と日本のトップ企業では時価総額に大きな開きがあるという点である。たとえば、イトーヨーカ堂の株式時価総額は米小売大手ウォルマート・ストアーズの14分の1、武田薬品はファイザーの5分の1、松下電器産業は米電機大手ゼネラル・エレクトリックの10分の1、三菱東京フィナンシャル・グループは米シティ・グループの4分の1、新日本石油が米メジャーのエクソン・モービルの30分の1という状態である。実に日本を代表するトップ企業が理論上はいとも簡単に外資企業に買収されてもおかしくないのだ。株式交換での買収の場合は、お互いの会社の株主総会で2/3以上の賛成が必要となるため、買収を仕掛ければ即、外資企業になってしまうということではないが、買収を仕掛けた側が、「買収をして100%子会社にしたほうが株主の方に今まで以上の利益を還元できます」ということを説明し、株主がそれに納得すれば実現するケースも少なくないであろう。今回のライブドアの一件は、まさにこの株主が主役の株式交換買収時代が日本にも近づいていることを予感させるものである。

 日本では長らく、株主に対する経営陣の説明責任が十分果たされず、配当も雀の涙で、本来の「出資者」としての地位を軽んじられてきたと言われてきた。株式持合いという長年の慣行によって、経営陣と出資者との間に本来の緊張関係が失われていたともいえる。ライブドアの一件では法的なルール整備の問題ばかりが取りざたされているが、一方で経営陣の意識や株主としての意識を問われる時代がすぐそこまで来ている。経営者は「いかに企業の市場価値を最大化して株主に報いるか?」、株主は「どの企業形態が自分の出資分を最適化できるか?」に今後さらに関心を持つように求められる。私達、国民ひとりひとりが感情論ではなく資本の論理を冷静に考える必要があるということだ。そして政治家はそうした大企業買収時代が国益に資するように環境整備をしていかなければならない。

 

 

 


 

 

 
   

2005年3月2日
田嶋 要

 
 


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