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マーケットの信頼性

 

 単なる一ライブドアグループの不正ということであれば、それはどこの国でもある、日本でもかつてあった不正の繰り返しの一場面に過ぎず、当局の調査に基づいて適正に処理されるだけの話だ。しかし、東証が全面的に取引を停止したということは、本質的により深刻な問題を含んでいるように思う。ライブドア問題を契機に、売り注文が殺到したというのが理由らしいが、そういう市場経済の中で当然予想される事態に対して、インフラがついていけないというのでは、日本という資本主義国の信用は大きく失墜してしまうのではないか。開発途上国のカントリーリスクを考える際には、その国が外貨の持ち出しを禁止する可能性や、債務不履行でバンザイする可能性を探るわけだが、今回のようなことを平気でやれば、日本の市場関係者の間でのカントリーリスクも上がらざるを得ない。

 想像するに、先だっての株式注文の誤発注の事件の際の東証の責任問題というのが、恐らくは頭をよぎったのであろう。今度は後手に回らない、という覚悟で、いち早い決断をしたつもりだったのかもしれないが、ライブドア以上にその東証の決断が市場関係者に大きな不安材料となった。

 デイトレーダーの急増は、過去一年ぐらいの新聞記事に時々報道されていたし、携帯電話の普及や景気の回復基調が、その傾向に拍車をかけているのは誰の目にも明らかだ。恐らくは携帯電話からの取引がもっとも盛んなのが日本なのであろうが、そういうことを前提にシステム増強はとっくの昔に終わっていなければならない。誤発注事件の際に、せっかく東証システムの欠陥が露呈したのにも関わらず、その際にキャパシティーの再検証のような当たり前のチェックを怠っていたのではないか。東証の新会長兼社長は、あくまでライブドアを悪者にしたいのであろうが、この問題はライブドアとは独立の問題であると私は考える。

 もう一つ思うことは、あえて言うが、デイトレーダーの現状は放置しておいてよいのかということだ。当然米国などの他の先進国にも同じように株取引を繰り返す人々は大勢いるのであろうが、日本の最先端の携帯環境(米国の携帯市場は日本よりはるかに遅れている)が、デイトレーダーには極めて便利な状況を作り出しているということは明らかだ。携帯での取引は目立たないが故に、職場で業務中に取引をしている個人は全国に相当数いるのではないか。そして、より本質的な問題は、証券取引ということが資本主義の国において一体どういう意味を持つことなのか、ということだ。一日に何十回も売り買いを繰り返すことが、経済や社会にとって何らかの役割を果たしているとはとても思えない。株式市場が、国営のギャンブル場となってしまってはいけないのだ。もっとも、今回のような株価の急落でデイトレーダーが大打撃を受ければ自ずから過熱気味な事態は沈静化するだろう、というのも一つの見識だ。その方が自由主義経済の建前には沿っているとも言える。

 ネット社会では、良いことも悪いことも、極端なまでに増幅する。またそれを証明する事例が加わった。今私が取り組んでいるインターネットを選挙運動に解禁する法案の際にも、結局はその点が最大の検討事項である。

(今、金融庁からヒアリングを終えた。取り引きボリュームの拡大に応じて東証の売買システムと精算システム(約定したものに対応)の両方の処理能力を近年何度も引き上げて来た経緯が分かった。資本主義経済の根幹に関わることであるのに、一民間企業の在庫管理のような対応をしてきたのだ。だが、金融庁は、予算の制約があったわけではないとも言っていた。ならばなぜ、10年、20年は問題ない処理能力の増強を一気に行っておかなかったのか。システム納入業者の富士通とは、常日頃どんな打ち合わせをしていたのか。マーケットからの危険シグナルは何度も出ていた。明らかに東証の判断ミスと言える。)。

 
   
2006年1月19日
田嶋 要
 
 


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