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店じまい

 

実は私の実家は名古屋市東区にある薬局で、亡くなった父の跡を継いで妹がやっています。小さな個人薬局で、ご他聞に漏れず経営は大変苦しく、最近は駐車場代と電気代が出るのがやっとという感じでした。それでも何とかやってこれたのは、土地などの資産を妹が亡父から相続していたからです。

その薬局が、今日店じまいとなりました。私は突然母から知らされました。私も高校まで住んでいた場所の一階にあるお店です。そして母が嫁いで来たときからずーっとそこにあったお店です。それなりにその地域でお役に立った薬局です。それはそれなりに長い長い歴史があります。戦後の焼け野原の中で、当時まだ20代だった亡父は薬学部を出たてで、薬局を新築し、近所では話題になったようです。働き盛りのころ、我が家の薬局は年中無休、そして朝6時から夜10時まで店が開いていました。

月日が流れ、最近は隣近所に活気のあるお店は皆無になってしましました。子供たちの数もめっきりと減りました。そしてお年寄りの姿ばかりが目立ちます。典型的な、地方都市の風景。景気が比較的良い中部圏でもこれが実態です。タバコ屋も酒屋も、スーパーも文具屋も本屋もなくなりました。そして人々の触れ合いがなくなっていきました。今思えば、小規模のお店と言うのは、人々の触れ合いの場なんですね。私も亡父の仕事を横で見ていて覚えているのですが、本当にいつもいつもお客様やら仕入れ業者の方やら、あるいはメーカーの方やら、様々な方が入れ替わり立ち替わり薬局の中にいて、四方山話をしていました。単にモノを売る、買う、という世界ではないのです。

で、妹は、薬剤師として外に仕事を探すことになりました。幸い近所の大きなチェーンの薬局に勤め先が見つかったようです。テナントのお店がたくさん入る、いわゆる大規模店舗が近所に完成するということで、そこに行くのです。イオンです。何となく複雑な心境。もちろん、悪いことばかりではないのですが、色々な業種の、小さいお店があちこちにある町の風景が消えていくということは、日本の20世紀の資産が消えていくような感じもいたします。子供達の安全を見守る大人たちの「目」も消えていく感じがします。世代を超えた人々の触れ合いも消えていく感じがします。世代はちょっと違うのですが、三丁目の夕日、思い出します。

 
   
2006年2月16日
田嶋 要
 
 


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