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何を教えるか


今日、桜井よしこさんの講演を聴いた。実はじっくり一時間聴いたのは今回が初めてである。どうも昔のニュースキャスター時代のイメージが今でも強いが、華奢で、か細いお姿とその話しぶりとは裏腹に、その発言内容は明快で時として舌鋒鋭いという印象だ。「財政の厳しい日本であるが、今どうしても予算を増強せねばならない分野が二つある。それは教育と防衛だ。」最後のメッセージは圧巻だ。今、最も日本で影響力あるオピニオンリーダーの一人であろう。

教育問題と外交問題という、一見別個のテーマのようであるが、実はこの二つは密接に繋がっている、という話から始まった。実は私も教育基本法の検討の中で野田佳彦さんなどと同じ意見を持っていたのだが、桜井よしこさんも同じ問題意識だ。要するに日本人は歴史を学ばずに成人するという点である。世界史の未履修問題が広がっているが、必修科目の世界史でもこういう状況で、ましてや必修ではなくなってしまった日本史においてをや、である。世界史よりもまず日本史、という点は、英語よりもまず日本語、という点と同列に私も主張しているのだが、桜井さんが仰ったように、そもそも「歴史」というのが高校の科目としてもはや独立しておらず「社会」科の一部に埋没させてしまったことが、大失敗であるという点は明快だ。今日の出席者の大半はこの事実を知らなかった。

日本にだけ住み続けるとなかなか気がつかないことだが、その国が何に力を入れて教えるか、ということが明確にその国の国民の特徴・知識・常識を創る、ということは、私も海外で実感として何度も体験している。たとえば米国の教育では数学と地理が弱いということを話では聞いていたが、米国で大学院に学び、本当に驚愕するようなケースを散見した。経営大学院に入る際の数学のテストは、およそ日本の中学で学ぶようなレベルであったし(2時間の試験であったが、多くの日本人留学生は30分で終わってしまった)、また日本の場所を世界地図で指し示すことのできるアメリカ人は多くなかったのはもちろんのこと、ロサンジェルズが東海岸にあると思っているアメリカ人さえいた。日本の「常識」では考えられないことだ。他にも、大学院でのインド人の友人は本当に数学的な能力が高い人が多く、なるほど「ゼロ」を発見し、「二桁掛ける二桁」までを暗算させる国だと納得したものだし、また中国人の若手エリートの多くは外国に一度も行ったことがなくとも見事な発音で正確な英語を話す人が多い。

長い人生のごく初期の段階にある子どもたちの、しかも限られた学校の時間に、何をどこまで教えるべきか。このことをどれだけ真剣に検討しても、検討しすぎということにはならない。それほどに重要な問題である。

 
   
2006年11月29日
田嶋 要
 
 


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