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見えない相続


今回の安倍ドタバタ辞任劇を振り返ると、「そもそもなぜあのような人物が総理大臣になってしまったのか」という問いかけが自然と出てきます。自民党の皆さんも、国民のみなさんにとっても、これは重要な問いだと思います。

このことを突き詰めて考えると、やはり世襲政治の限界ということに至ります。今、安倍さんの相続税脱税の問題が週刊誌で取り上げられていますが、親の代、おじいさんの代から政治家を世襲している者は、この相続税が問題となる政治資金などの「見える相続」以外に、いわゆる地盤という「見えない相続」があります。恐らくはお金に換算すれば何億円の価値にもなるこの地盤には、「地盤課税」というようなものはありません。地盤が非課税でそっくりそのまま相続されるために、本来、政治家として立つ人間が鍛えられる十分な機会が与えられないのです。

ポスターを例に挙げます。私のようなゼロから政治を始めた人間は、地元でポスターを貼らせてくれるお宅を探すのが大変です。人間関係が何年もできて初めて貼らせてくれる方もいます。支援していても貼らせてくれるとは限りません。ところが、世襲の場合、親の代、おじいさんの代からの掲示板が選挙区に無数に存在しているのです。何の苦労もなく。

政治という、実に困難とリスクの多い、マックスウェーバーの言葉を借りれば、「情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業」をやり通すに必要な忍耐力などの資質を十分に身に着けることなく、国会議員となり、しかもあろうことか総理大臣になってしまうという、まさに冗談のようなことが現実に起きてしまうわが国の政治の根っこには、世襲という問題が横たわっているのです。全ての世襲政治家がダメとは言いませんが、世襲政治家には、常にその危険性が伴い、結果として“不適材不適所”の政治がこの国では続いてしまうのです。

何人かの方が新聞等で「安倍さんの政治生命は終わった」と言っていました。私はむしろ、会社の寿命は50年と言われるように、家業として続いた「安倍家の政治生命は終わった」というのがより正しい言い方だと思います。それが日本のためであり、人間社会の必然でもあるのです。

 
   
2007年9月14日
田嶋 要
 
 


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