【かなめ日記】「死刑執行の実際」

掲載日:2014.06.17

昨日、衆議院法務委員会メンバーで訪ねた東京拘置所では、刑場、つまり死刑執行現場も視察することができました。拘置所になぜ刑場が?と思われる方も多いと思います。言って見れば、罪を犯したものの刑期などが確定する前の諸々の未決の者と、懲役刑の受刑者のための刑務所に収容するわけにもいかない確定死刑囚(懲役刑ではない)とが、同居しているという現実です。死刑が確定したのですから、そんなに多くはいないはずですが、実は今、日本には死刑確定者が130名以上いて、その半数近くはここ東京拘置所に入って、死刑執行日を待つのです。

本人には懲役刑としての作業が無いので、毎日、拘置所の中で雑誌を読んだり映画を観たり、ブラブラして過ごすそうです。希望者には、宗教教誨師のお話も聴けるそうです。仏教教誨師が7人、キリスト教5人、神道1人、天理教1人という構成だそうです。質問も出ましたが、ムスリムはありません。

死刑執行は、本人には当日の朝、突然に知らされます。執行場所に近づくとお線香の匂いが漂っていました。最初に入る部屋にはソファと仏壇があります。その部屋で、執行後の自分の遺体について、部屋の荷物の始末についてなどの事務的な説明があります。希望すればそこで供物、を頂くことも出来るそうです。人生最後の食物。次に隣の部屋に移ると、また仏壇があります。椅子はありませんでした。そしてその部屋の右側のカーテンが開くと、もう目の前に執行の場所がありました。

刑場は、赤色の四角の枠が板張りの床に描かれており、その真ん中にもう一つ赤色の円が描かれており、死刑囚はその円の場所に立ちます。真上にはワイヤーがぶら下がっています。比較的新しくなった現在の東京拘置所で今日までに死刑執行された者は24人、執行直前に取り乱した者はいないそうです。

想像していたのと違ったのは、その執行は、複数の拘置所職員や検察の人が実際にガラス越しの間近で見ている状態で実施されるということです。東京拘置所長はそれらをつぶさに見届ける一人です。任務とはいえ厳しいものがあります。所長のお顔にはその苦悩が現れている印象でした。ちなみに、家族には執行後に通知が行われます。

うわさで聞いていたとおり、執行は隣の部屋の三つの押しボタンで行われます。その部屋には3人の拘置所職員がランダムに指名され、どのボタンが実際に執行に連動しているかは知らされません。またその部屋から執行は見れない構造になっています。ボタンを押すと、赤色の四角の枠の板張りが片側だけ外れ、高さ4メートル位の所に宙ずり状態になります。所長のお話では、死亡確認のタイミングには個人差があり、大体20分間、ぶら下がった状態に置かれます。死亡確認は拘置所の常勤医師が、そして死亡確認後のご遺体の処置は拘置所職員が行います。

刑場は、これまでにも国会議員の視察の時には公開されてきたそうですが、マスコミに対しては、民主党政権の千葉法務大臣のご決断で初めて公開されました。また、最高裁で聞いたことですが、死刑判決を下す最高裁判事には、刑場を一度も視察したことのない人が少なからずいるそうです。それがいいかどうかは兎も角。

偶然ですが、今日は日弁連との死刑制度に関する面談があります。終身刑の導入などとともに、死刑制度に関する国民的議論が深まるよう、引き続き役目を果たしてまいります。

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