【現地本部長日記】「シーベルトとベクレル」

掲載日:2011.08.04

最近、複数の方々から、チェルノブイリと比較した福島の土壌汚染の問題をご指摘いただいています。つまり、チェルノブイリの場合には平米あたり55万5千ベクレル以上の地区が強制立ち退き地区に指定されたが、福島の場合にはそれよりも遥かに高い数値が出ている地区でも何の指定もされていないのは問題である、という話である。

当然こういうご指摘は気になりますし、妥当性は確認したいので、私なりに専門家のお話を色々伺ってみました。特に、文部科学省が8月下旬に福島県全域の2キロメッシュの空間線量(シーベルト単位)と土壌汚染(ベクレル単位)のデータを公表することになっているので、ベクレルに関する注目度は今後更に上がると考えられます。

確認できたことは、空間線量自体が、土壌に降り注ぎ蓄積した放射性物質(今はほぼ全てセシウム134と137)からの放射線を含めた、人体への影響数値であること、そして国際放射線防護委員会(ICRP)や国際原子力機関(IAEA)も積算線量(シーベルト)を放射線防護の基準値としていること、です。さらに、チェルノブイリの場合にも最初の4年間は、わが国と同様、原発からの距離と年間累積線量によって避難区域などの設定を行っていたのです(事故発生から一年間の上限値は100ミリシーベルトでした)。ただ、1990年の4月、つまり事故から4年が過ぎた時点で、それまでの積算線量という考え方から、セシウム土壌汚染度を避難・移住や除染のための基準数値とすることに変更をしています(平米あたりセシウム148万ベクレル以上で強制避難、平米あたりセシウム55万5千ベクレル以上でも妊婦と子どもは強制避難、それ以外はすべて自主避難とされました。)

なお、呼吸による内部被ばくについては、文部科学省がIAEA等の提唱している手法を用いて、土壌に沈着している放射性物質が空中に巻き上げられ、それを呼吸によって吸入する影響を学校の校庭で調べた結果、その内部被ばくの影響は、内部と外部を合わせた全体の被ばく量の約2%となることが確認されています。

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